2021年06月24日

『人質司法』(角川新書)

このブログでも繰り返し論じた未決拘禁問題=人質司法問題について、一般読者向けに書き下ろした『人質司法』(角川新書)が全国の書店とネット通販で発売開始となりました。(税込み990円)

「まえがき」より

いかなる国・政府にも、必ず、一定の行為を犯罪として定め、犯罪を行った疑いのある人の身柄を確保して、訴追し、その罪の有無を決定し、そして、有罪の場合には刑を執行するという仕組みがあります。刑事手続は国家権力というものが存在するもっとも中核的な理由の一つです。本書は、わが国において、犯罪を行った疑いのある人(被疑者・被告人)の身柄を確保する制度(未決拘禁)がどのように行われているのかを、普通の人々に理解してもらうことを目的として書かれました。
 叙述にあたって、私は事実――何が行われているのか――に徹底的にこだわりました。私自身が40年間にわたって繰り返し体験してきたことをベースにしています。しかし、それだけでは個人的・主観的すぎますから、歴史を紐解き、海外の制度との比較を行い、そして統計を参照しました。
 本書のタイトルを「人質司法」としたのは、現在のわが国の未決拘禁制度を表す言葉として、これ以上に適切な表現を見つけることができなかったからです。「人質司法」という表現は、主として、この国で刑事弁護を生業(なりわい)としている弁護士が使っています。誰が考えたというわけではなく、私自身も弁護士になって刑事弁護をやりはじめてすぐにこの言葉が口をついて出るようになりました。われわれ弁護士は依頼人のために依頼人に代わって依頼人の権利を行使する立場にあるわけですが、依頼人の権利を確保しそれを効果的に行使しようとすればするほど、依頼人の身柄拘束が行われ、長引くことになります。依頼人の権利を放棄することによってはじめて依頼人は自由を確保し生活を維持することが可能になります。この状況を「人質」と表現するのは極めて適切だと思います。そして、この状況は、海外の仕組みと比較するとき、まさにわが国独特の仕組みであることがわかります。
 ここで自由と交換される権利は憲法がすべての市民に保障するもっとも基本的な権利です。この意味で、人質司法は犯罪者や悪人だけの問題ではなく、法律家だけが考えれば良い話でもなく、日本国に暮らしているわれわれ普通の市民全員が議論しなければならない事柄でもあるのです。本書を通じてそのことを是非理解していただきたいと思います。刑事司法は国家の土台です。その有り様を国民の多くが理解していること、そして、政府の役人たちに任せきりにするのではなく、自分たちの言葉でそれを論じ続けることは、日本国が自由で安全な国でありまた国際社会において信頼される国家であるためには必要なことだと私は考えます。



plltakano at 20:02コメント(2)身体拘束 | 未決勾留  このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント一覧

1. Posted by chaoくん   2023年03月10日 13:40
4 2019年12月に私の友人がありもしない贈賄容疑で逮捕されました。本人は否認し留置されたまま取り調べを受けていましたが、無実を訴えて検察のシナリオ通りの調書作成には応じませんでした。その為、弁護士から何度も保釈請求をしても却下され7ヶ月もの長期間警察署の留置所で留置されました。
長期拘留時には、手を変え品を変えての自白を迫り、早くに亡くした娘さんのことも引き合いに出したりと無茶苦茶な理論で有罪を認めるよう迫ってきたと言っていました。
逮捕1年後ごろから一審が始まり、途中に裁判官の異動による交代のため審議中断がありましたが2022年2月に無罪判決を勝ち取りました。
しかし検察上告により高裁での裁判になり、検察側の証人尋問が1人だけありましたが、逆転の有罪判決となりまだ続いています。
尋問内容は贈収賄に関わるような尋問ではなく業界のガイドラインや証人の所属企業の社内規定の確認に終始しただけの内容で、弁護人からの証人尋問もそれを確認するだけでした。
それにも関わらず、一審で無罪とされたすべての内容を検察シナリオ通りに認定し有罪とされてしまいいました。
あまりにもひどい内容で最高裁に上告するのは当然のようです。
話が少々外れました。
友人は勾留期間は短時間の弁護人との接見程度しか弁護活動に時間が割けないのに、検察はその間には証拠品だとする何もかもを持ち出しシナリオ補強をして裁判に臨みます。
国家権力と個人の弁護との大きなギャップがあるにも関わらず、何もできないようにしてしまう人質司法には本当に問題が多いと思います。
逮捕したら100%有罪にしないといけないと思い込んでおり、間違っていても個人には責任が来ない国家機関としての検察組織の一員なので人の痛みが分からないのだと思います。
2. Posted by 高野隆   2023年03月11日 14:31
chaoさん、コメントありがとうございます。上告審で再度逆転することを祈ります。

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