2019年09月18日
証拠保全却下決定
日産から東京地検が差押えあるいは日産が東京地検に提出したPC等の証拠保全命令の申立てについて、東京地裁刑事第14部島田一裁判官は、本日、われわれの申立てを却下する決定をしました。その全文は次のとおりです。PDFはこちら。
本件証拠保全請求を却下する。
1 請求の趣旨及び理由の要旨
東京地方検察庁特別捜査部は,上記被告事件の捜査において,日産自動車株式会社及びその従業員らから多数の電磁的記録媒体を差押え,あるいは任意提出を受けたが,検察官は,日産の企業秘密や役員及び従業員のプライバシー保護の観点から,証拠品を還付したり,開示対象である電磁的記録媒体のうち一部不開示とした部分を削除する作業を進めている。したがって,別表1及び別表2に記載された電磁的記録媒体(以下,「本件電磁的記録媒体」という。)について,あらかじめ証拠保全しておかなければ,検察官やその還付を受けた日産又はその従業員業員によって証拠の内容が破棄隠匿される蓋然性があることから,検察官が保管する証拠を保全すべき特段の事情が存するる。
よって,本件電磁的記録媒体について,記録命令付差押えの方法による証拠保全を請求する。
2 判断
一件記録及び事実取調べの結果によれば, 次のような事実が認められる。
(1) 東京地方検察庁の検察官は,押収した証拠のうち,本件と明らかに関連性がない証拠については,順次還付することとし,日産自動車株式会社側から還付の要望を受けるなどしたもののうち,本件との関連性が乏しいと判断した書面等の証拠(いずれも電磁的記録媒体を含まないもの)について,令和元年7月14日 から同月2 8 にかけて4回にわたり還付した(主任弁護人が指摘している還付手続) 。
(2)検察庁では,一般的な取扱いとして,事件と明らかに無関係と判断した電磁的記録媒体については,複写物を残していないが,判断に迷うものについては,念のために複写物を作成して残している。
(3)東京地方検察庁の検察官が本件捜査において押収した電磁的記録媒体には,本件被告事件に関連するデータと企業秘密や個人のプライバシーに関するデータが混在しているものが多くある。そのため,検察官は,弁護人からの証拠開示請求に対し,電磁的記録を一部開示する場合,まず押収した電磁的記録媒体から,保存されているデータそのままの複写物を作成し,企業秘密や個人のプライバシー保護の観点から一部不開示と判断した部分のデータを削除する方法により開示に適した複写物を作成して,弁護人に閲覧させ,謄写請求された場合には,さらに,その複写物を作成して交付できるように準備をしている(なお,電磁的記録媒体の複写物そのものに不開示とした部分を特定して明示することは技術的に難しい部分があるが,検察官は,書面で回答する方向で検討している。)。
(4)それ以外に検察官が,本件搜査によって押収した電磁的記録媒体のデータを削除したり消去したりすることはなく,開示した証拠(一部不開示としたものを 含む)については還付せず,東京地方検察庁で保管している。
以上によれば,本件電磁的記録媒体については,証拠保全の必要性がないことに帰する。
よって,本件証拠保全の請求を却下することとし,主文のとおり裁判する。
令和元年9月18日
東京地方裁判所刑事第14部
裁判官 島田一
主文
本件証拠保全請求を却下する。
理由
1 請求の趣旨及び理由の要旨
東京地方検察庁特別捜査部は,上記被告事件の捜査において,日産自動車株式会社及びその従業員らから多数の電磁的記録媒体を差押え,あるいは任意提出を受けたが,検察官は,日産の企業秘密や役員及び従業員のプライバシー保護の観点から,証拠品を還付したり,開示対象である電磁的記録媒体のうち一部不開示とした部分を削除する作業を進めている。したがって,別表1及び別表2に記載された電磁的記録媒体(以下,「本件電磁的記録媒体」という。)について,あらかじめ証拠保全しておかなければ,検察官やその還付を受けた日産又はその従業員業員によって証拠の内容が破棄隠匿される蓋然性があることから,検察官が保管する証拠を保全すべき特段の事情が存するる。
よって,本件電磁的記録媒体について,記録命令付差押えの方法による証拠保全を請求する。
2 判断
一件記録及び事実取調べの結果によれば, 次のような事実が認められる。
(1) 東京地方検察庁の検察官は,押収した証拠のうち,本件と明らかに関連性がない証拠については,順次還付することとし,日産自動車株式会社側から還付の要望を受けるなどしたもののうち,本件との関連性が乏しいと判断した書面等の証拠(いずれも電磁的記録媒体を含まないもの)について,令和元年7月14日 から同月2 8 にかけて4回にわたり還付した(主任弁護人が指摘している還付手続) 。
(2)検察庁では,一般的な取扱いとして,事件と明らかに無関係と判断した電磁的記録媒体については,複写物を残していないが,判断に迷うものについては,念のために複写物を作成して残している。
(3)東京地方検察庁の検察官が本件捜査において押収した電磁的記録媒体には,本件被告事件に関連するデータと企業秘密や個人のプライバシーに関するデータが混在しているものが多くある。そのため,検察官は,弁護人からの証拠開示請求に対し,電磁的記録を一部開示する場合,まず押収した電磁的記録媒体から,保存されているデータそのままの複写物を作成し,企業秘密や個人のプライバシー保護の観点から一部不開示と判断した部分のデータを削除する方法により開示に適した複写物を作成して,弁護人に閲覧させ,謄写請求された場合には,さらに,その複写物を作成して交付できるように準備をしている(なお,電磁的記録媒体の複写物そのものに不開示とした部分を特定して明示することは技術的に難しい部分があるが,検察官は,書面で回答する方向で検討している。)。
(4)それ以外に検察官が,本件搜査によって押収した電磁的記録媒体のデータを削除したり消去したりすることはなく,開示した証拠(一部不開示としたものを 含む)については還付せず,東京地方検察庁で保管している。
以上によれば,本件電磁的記録媒体については,証拠保全の必要性がないことに帰する。
よって,本件証拠保全の請求を却下することとし,主文のとおり裁判する。
令和元年9月18日
東京地方裁判所刑事第14部
裁判官 島田一